ルーファスの坊ちゃん。
なにがあったかは知らないけれど、あたしはあんたがちっちゃいときから見ているからね。
あんたが何の理由もなく追われるようなマネをする子じゃないってことくらい、このマリーにはわかっているさ。
おかしくなったのはいまの帝国のほうだよねえ。
なんだい。子供ひとり捕まえてどうしようってのさ。馬鹿におしでないよ。誰があんたがたに坊ちゃんを引き渡すものかい。
どうしたのね、坊ちゃん?
ずぶ濡れのままじゃ風邪をひいちまうねえ。乾いたタオルならたくさん使ってよいからね。
ついでに涙も拭いちまいよ。
坊ちゃん。あたしはわかっているよ。あの子だね? あのヤンチャな……あんたが年相応に笑うようになったのは、あの子が来てからだったねえ。あたしもあの子が好きだよ。
心配しなくても、坊ちゃん、あんたが信じているものはあたしも信じるさ。
でも坊ちゃん、今夜はゆっくり休まなくてはいけないよ。グレミオやクレオさんたちも心配しているからね。ぐっすりお休み。
マリーにまかせなさい。怖い連中はみんな追い出してやるからね。
雨が止まないねえ。ますます酷くなったかねえ。
いったい、何が狂っちまったんだか……。
明日のことなんて、誰にもわからないさね。
だからお休み。安心なさい。
ここは、マリーの宿屋だよ。
2005-02-11