かならず目に見えやすい形で指示を伝えるから、それまで絶対に動かず愛を語りあうふりをしていろと理事長は言ったが、三十分を経過して遙兵はだんだんぐらぐらと煮詰まってきた。
真横でピッタリとケツを寄せている男が時雨努あたりなら、まだ辛抱もできたであろう。
今日をまだ四分の一も終えていないのに、一生分の『よりによって』をつぶやいたような気すらしてくる。
お達しのとおり愛を語りあうふりはしてみせましょう。これもすべてテツとノエルを救出するため。こっそり毒を囁いてはいけないとは言われていない。
みんな他人のふりをしているが、まわりは半分以上が牡鈴学園の関係者だ。
お子さまカップルの不自然な多さに目くじらをたてる者がひとりもあらわれないあたり、事なかれ主義の日本でたすかったとしんそこ思う。
自販機コーナーで紙コップのコーヒーを分けあいっこしながらリネージュ2の話に夢中になっている経夢人のお相手は、2組の裏美江礼実。男の子っぽい美少女である。
くそ、いまいましい。
こんなところに来てまで文庫本を開いている時雨努の横にちょこんと座るのは、裏美三姉妹の末っ子、裏美虎実。姉より少しワイルドさただよう謎の多い子、中等部のとらみちゃんといえばマニアのあいだでかなりの有名人。ひそかにアタックを狙っている男子生徒も数多いという。
くそ、うらやましい。
ついでに裏美三姉妹の真ん中についても説明しておこう。裏美鳥栖。虚弱体質につきサナトリウムで長期療養中との未確認情報。
お薬持参でもかまわないからおれとペアになってくれ。
遙兵は悲しくなった。友情を誓った男どもがだれもフォローしてくれない。
”彼女”はときおり、耳元で甘い吐息をもらす。そのたびに首筋の毛がぞわりと逆立った。
一刻も早くドンパチになってくれ。ああ、こうしているあいだにも捕まった鉄人がムレムレ・ムックレーにあんなことやこんなことをされているかもしれないというのに。
「あ、パパだ」
ふいに霧流が顔をあげた。直通高速エレベータから出てきたのは霧流の父、魚太だった。
まっすぐ喫煙コーナーに向かい、夜景を観ながら煙草に火をつける。一匹狼の背中がまこと柴田恭兵で、きまっている。
「オヤジさんは単独かよ。ちぇ、いいな」
「パパは、ママ以外の女性とはたとえ演技でも肩をならべるはずないよ」
遙兵は鼻で笑った。
「へっへー、熱愛ってわけ。そりゃそりゃ」
「ぼくのママはね、異世界の住人なんだ」
「……はあ?」
霧流はやけにまじめな顔で言った。
「もうずっと長いあいだ、精神病院に入院してるんだ。ママの世界にはパパしかいないみたい。だからパパは一生、ママに連れ添うっていってた」
「……」
遙兵は後悔して口をつぐんだ。そういう込みいった話はあまり聞きたくなかった。大失敗である。
「なに?」
視線を感づかれて、遙兵はあわてた。
「えと、あー、そうだ、日の出観る場所、陣取っとこうぜ。たしか六時五十分っていってたよな。ああ、まだ一時間以上あんな。でももうぼちぼち明るくなってきても……」
立ちあがりかけたときだった。
まばゆい閃光が展望ロビーを奔った。
「きゃっ!」
女の子の悲鳴があがる。
閃光は一回ではなかった。空を切り裂いたと思ったのは錯覚で、光はあとからあとからにじみ出た。水平線から太陽がのぼるのを早送りで体感しているようだった。フロアの床から、壁から、天井からこぼれて流れこみ、あらゆる物質を透過し、きらきら輝く波のように空気を洗った。
「……きれい」
誰かがつぶやいた。
想像を絶する光景。まるでファーイースト・フィナンシャルビル全体が発光しているようだ。
「あのときと同じだ」
遙兵がぼんやりと言った。
「うん」と霧流も同意する。「弓ノ間くん。魁くん。どっちだろう」
夢から覚めたように遙兵が跳ねた。
「……っておい! まさかなにかあったんじゃねえだろうな。くっそ、指示なんてもう待ってられっかよ! いくぞ、燕」
「待って猛地くん、外、ヘリ!」
爆音が轟く。
小型のロビンソンR44機が、サーチライトを振りまわしながら展望窓の外をホバリングしていた。機外拡声器からわんわんと押しだされたのは、おなじみ銀町絵麗亜の宝塚歌劇団的美声であった。
「梁山泊の生徒教師有志諸君、ちゃんといいつけを守ってるかい。
弓ノ間鉄人、魁ノエル、あんたらも鼓膜が無事ならこっちをお向き。グレアム・クレイ、いいかげんにしないとミサイルで大事な研究所のどてっ腹に穴あけるよ。
クレイ、いますぐアメリカ本社に電話をかけてみるんだね。どえらい騒ぎになってるはずだよ。アメリカ証券取引委員会がハルモニア製薬の不正をすっぱ抜いたとあっちゃ、ドン・ヒクサクに逮捕状が出されるのも時間の問題。株は大暴落必須。金の切れ目が縁の切れ目って言葉知ってるかい。離反したやつらがもっと根深い秘密をチクったら、どういうことになるだろうねえ。あんたもリストラ必須、いや、十中八九ブタ箱行きだーね。げほん。
ちょっと、もっと出力あげられないのかい? あー、本日は晴天なり。
さてクレイ、うちのふたりをいじめたらただじゃすまないよ。どうすることが自分にとっていちばん得か、きっちり考えな。
いまから十分以内にふたりを五体満足で展望ロビーに連れてこい。それも拒否するんだったら……鉄人、ノエル、かまうこたあない、思う存分暴れてそこからお逃げ。上の展望ロビーでみんなが待っている。パーティをするために集ったんだよ。あんたら主役がいなくちゃ始まらんとよ。あたしは照明係をつとめるからね。
クレイ、そのあときっちり話をつけるよ。あんたほどデキの悪い生徒ははじめてだ。
……ってわけで、話は以上、カウント開始! げほんげほん」
遙兵は胸が爽快になった。決着がついたら、理事長にねぎらいの浅田飴を百缶プレゼントしよう。
「待ってるのもなんだな。よう、迎えにいくかー?」
遠藤璃乃の提案に、珍妙カップル軍団からおおという歓声がわいた。
「出口ってホントにエレベータしかないわけ、ここ」
「ざんねんながら正解」と鉄人は襲ってきた職員をでまかせの空手チョップで悶絶させながら叫んだ。
「しかもご丁寧に一階おりるごとに戦闘発生のはず。そもそもエレベータがおれたちのいうこときくかどうかもわかりゃしない。ファイナルファンタジーのラストダンジョン並みの難易度だぜ、ったくよぉ!」
ノエルの眼がスライドした。
「非常口はっけんっ!」
奥まった通路に緑色のランプが見えた。
駆け寄って愕然とした。ドアの手前が透明な超特殊強化樹脂の壁で何重にも塞がれている。
「非常用の意味ねーじゃねえかよ、くそったれ!」
鉄人は歯噛みした。
銀町絵麗亜がヘリから発した警告は、鉄人とノエルにも届いていた。だがにやりと顔を見あわせたのはわずかな時間で、なにがなんでも自力脱出となれば困難を感じずにはいられなかった。
「ラ・ムエルトで気絶させることはできないの」
「それがよ、よっぽどせっぱつまったときじゃねーとだめっぽいんだなこれが。おまえこそそいつでなんとかできねえの」
「うーん、意識して命令したことないからわかんない。っていうか、もうどうやったかも覚えてないや。記憶には自信あんのに、なんでこういう大事なことにかぎって超特急で忘却するんだろ。ねえ、人の運動ニューロンコントロールってさっきたしかにやったよね、ぼく」
「はああ。要するに、マジックポイントゼロってやつだな。がっくし」
「おまけに装備品もこんだけか」
ノエルは手に持った金属製の鉗子をハサミのようにちょきちょき動かした。
「なんでそんなもん」
「いや、ただなんとなくなつかしくて」
「役にたてば御の字ってやつだな」
「じゃあ、これは。いざってとき首を絞めて気絶させる」
細いプラスチック管。
「なに、それ」
「導尿カテーテル」
「まさか使用済みとかっていわねーよな」
鉄人は呆れてくっくと笑った。
目の前に立ちふさがる何枚もの超特殊強化樹脂を破壊すればもっとも確実な脱出口がそこにある。だがどう考えても、テロ対策に使用するような強固な壁を手ぶらで突破できるはずがなかった。
「かめはめ波が使えりゃよかったね」とノエル。
「ダメモトでやってみようか」
こういう切羽詰まったときの冗談も気力回復の源。じいちゃんから教わった卵割りの心得だ。
右手と左手の手首をパッチリとあわせて、手のひらを開く。
「か~め~は~め~、波っ!」
超特殊強化樹脂を叩く。
非常口のドアが蹴破られるのと同時だった。
タイミングがあまりにもよかったので鉄人はびっくりして後ずさりし、尻餅をついた。
「わっ!」
先頭をきって飛びこんできたのは、ぜんぜん似あわない格好をした遠藤璃乃だった。
「ワオ、いきなりいやがった!」
後ろから遙兵と霧流もやってくる。
「テツゥ!」
「よかった、無事だったんだ……ね……」
霧流はどもった。手がしゅるっとポケットにつっこまれ、目にもとまらぬ早業で携帯電話が取りだされる。
鉄人は透明の樹脂に両手と額をつけると、慌てて叫んだ。
「どうした燕、鼻ケガしたのか、血がでてる」
霧流はぶんと首を振って否定し、眼をらんらんと輝かせながらボタン操作を継続した。
「ううん、だいじょぶ、これは……ちょっとした不正出血。それよかムービー写メール撮らせて、弓ノ間くん」
遙兵は霧流を殺意まんまんで殴った。
かわりに璃乃が無線マイクで銀町とコンタクトした。
「みつけたぜ、六十三階。ふたりおそろいだ。ただしこっから救出は不可能っぽい。非常口から入れねえ仕掛けになってやがる。やっぱ正面から回りこむしかねえぞ」
銀町の声がひびわれた音声となって返ってきた。
「ようし、鉄人、ノエル、そこにいるんだね。もうちょっとがんばりな。あきらめんじゃないよ。みんながんばってるからね」
届くか届かないかわからないが、鉄人は大きな声で「はい!」と返事をした。
銀町に続いて、別の声が聞こえてきた。
「……ノエル、きこえる、ぼくだよ。いま銀町先生とヘリに乗ってるんだ。きみのいる場所のまわりをホバリングしてる。ここからは見えないけれど、すぐに会えるから」
「スノウ」とノエルは言った。
「ぼく、どうしてもきみに話をしなくちゃいけないことがある。どうしてもだ。だから、だからおねがい、無事で」
声がつまり、ふるえた。
ノエルは泣きそうな顔でうなずいた。
「うん……スノウ」
ふたたびマイクが銀町に手渡されたらしい。
「遠藤先生たちはそのまま非常階段を占拠してくれ。一般のお客さんはちゃんと下に誘導してやるんだよ。九六九大学の関係者は、そうだな、抵抗しなければ見逃してよし。ただハルモニアには気をつけな。武装しているよ」
「アイアイサー!」
通路のむこうから職員があらわれた。
「こっちにいたぞ!」
強化樹脂にパシッ、パシッと銃弾が弾ける。
「ノエル、中央突破だ!」
鉄人とノエルは姿勢を低くして敵に突っこんだ。
「やられるんじゃねえぞ、弓ノ間、魁!」
遠藤の怒鳴り声が背後に遠ざかる。
裸足なので加速がきかない。捕まりそうになると蹴りを叩きこんで、なんとかすり抜ける。それもやがて限界がくるだろう。鉄人はだんだん焦ってきた。
「ノエル、埒があかない。やっぱダメモトでエレベータに」
「ぼくたちが操作してもきっと動かない」
「だから誰か動かせるヤツを人質にとろう。ハッタリとカテーテルでなんとかすんだよ」
「わかった」
手術室のあるこの階が複雑構造でよかった。13ラボのフロアだったら身を隠す場所すらない。
エレベータは手術室の近くにある。クレイらと遭遇する危険性はかなり高い。そろそろ痺れもとれて手を回しはじめているころだ。
「ノエル、待っていてもどうにもならないぜ」
「そうだね、いこう」
ノエルは親指を立てた。鉄人も返す。
突進する。
目的は中央エレベータ。
案の定、ばったり出くわしたのはアルド・リンカーンウッドだった。
「ふふ、やっぱりね。まだそんなところをちょろちょろしてたの、マウス」
アルドはいきなり発砲した。
とっさに避けた鉄人の白衣の裾を弾丸はかすって抜けた。
「っ……ぶねーんだよっ!」
渾身の手刀が拳銃を遠くへ弾き飛ばした。
ノエルが首元に鉗子を突きつける。これでもじゅうぶんに凶器になる。
鉄人は右手をぴったりとアルドの喉に押しあてた。
「テロメア捕食の準備完了。エレベータを動かしてくれる、ドクター」
集ってきた医師や職員たちがその様子を見てたじろいだ。マウス二匹が人質にとった13ラボの室長は、涼しい顔でエレベータに向かった。
「ドアを閉めて」
「何階にご案内しましょうか、お客さん」
「出口に」
生体認証の画面にアルドは手を置いた。機械が瞬時に静脈パターンを読み取り、続いて虹彩と人相情報を特殊カメラが探る。照合を終えたシステムは行き先の入力を促してきた。
エレベータが動きだす。
「おい、誰が上に行けっていったよ」
鉄人は苛立って、喉にあてた手に力をこめた。
エレベータは上階をすぐに通り越し、出口のない暗い空間をさらに上昇した。だがそれもほんの短いあいだで、すぐにブレーキがかかり、ドアが開いた。
叩きつけた突風に鉄人は思わず身をよじった。
暖房の効いたラボ内とは百八十度ちがう、明け方の凍りつくような寒さの暴力に、裸同然の鉄人はすぐに屈服した。手がアルドから離れる。
必死に歯を食いしばって顔をあげた鉄人は、戦慄した。
銃をつきつけるグレアム・クレイ。
爆音が耳をつんざいた。ヘリの放つ轟音が、会話すら不可能にさせている。クレイの口が動いたが、内容が聞き取れなかった。
形勢がすっかり逆転した。ノエルと鉄人はアルドにエレベータから押しだされ、コンクリートの地面に転がされた。
そこはファーイースト・フィナンシャルビルの屋上ヘリポートであった。出発準備をととのえた大型のシュペルピューマが、メインローターを回転させていた。
上空ではもう一機のヘリが滞空飛行をして、サーチライトをこちらに向けている。
鉄人のこめかみの横で、ガチッ、といやな音がした。
銃口をあてられたまま、襟首をつかまれる。
飛行しているヘリの機外拡声器から銀町が怒鳴った。
「そのふたりに手を出したら承知しないよ、グレアム・クレイ」
クレイはにやりと嗤って、鉄人を軽々と吊りあげ、その喉元を腕できつく絞めた。
息ができなくなって、鉄人はじたばたともがいた。だがまわされた腕は一向に解かれない。気が遠くなってきて、頭の中をがんがんと血流の音がひびきはじめたとき、ようやく力が緩められた。
鉄人は呼吸をむさぼり、クレイの腕に爪をたてた。
足先が地面につかない。急激な酸素欠乏状態に追いやられたため意識が朦朧として、吐き気がした。
銀町の搭乗するロビンソンR44から、リペリングを装着した一名が降下の機会をうかがっていた。だがヘリポートはシュペルピューマが突風を起こしているので容易に近づけない。
クレイはゆっくりとヘリのわきを通り過ぎ、転落防止の金網に鉄人を押しつけた。
その間にアルドは武装したハルモニアの警備兵に命じて、ノエルを拘束した。
クレイは鉄人の耳許に口を近づけて、強い口調で訊いた。
「サーティーン、おまえに選ばせてやる。あれに乗って空の旅に出るか、いますぐここから墜ちるか。どちらにしても仲良しのトゥエンティセブンを同行させてやろう。地獄まで手をつないでいくがいい」
金網が背中でギチギチと鳴った。少しずつ上に持ちあげられ、やがて上体が外向きに反らされた。身体半分が地上二百九十メートル、七十階の中空にさらけ出されているのだ。
鉄人は半分だけ眼をあけた。まだ暗い空が見えた。ぽつぽつとまたたく星が見えた。
ヘリのサーチライトが通り過ぎる。銀町の声がする。
やめろと必死に説得する声だ。
それから、仲間の叫び声がする。そのなかでひとりだけ聞き取れたのは、遙兵の声だった。
「テェェエエェツゥゥウウゥウ!」
悲鳴をあげていた肋骨が凄まじい力に抗えず、いやな音をたてて折れた。
「返事をきこうか。サーティーン」
鉄人はゆっくりと口をあけた。
そして、はっきりと言った。
「どちらも、い、や、だ」
クレイの眉がつりあがった。
「ならば、わたしが選んでやろう」
「あんたに選んでもらう必要なんてない。おれは、どこにもいかない。おれは、あそこに……帰る」
姿は見えないけれど、はっきりとわかる。
鬼神の形相で駆け寄ってくる遙兵。救出の計算式をはじき出すのに懸命な時雨努。がむしゃらに警備兵に突進する経夢人。担任の意地で鉄砲の弾もはじき返す気まんまんの遠藤先生。燕は父親からハジキを借りてなければよいが。
おれはあそこに、梁山泊に帰る。
ノエルといっしょに。
クレイは冷淡に訣別を告げた。
「死ね、サーティーン」
重力と圧迫の束縛がふいに消失した。
視界がゆっくりと流れる。
満天の星空。やがて夜の終焉とともに光にまぎれる星々だ。街のきらめき。あれは人々がひとつひとつ丁寧に灯したあかり。鉄人は声につつまれる。歓声か。歓喜なのだろうか。百八つの星々の、それぞれがすこしずつ色のちがう、彩りのざわめき。
たくさんの星、たくさんの人々、たくさんの声、たくさんの彩り。でも同じものはひとつもない。
きれいだ。
そう思った瞬間、ノエルが目の前にいた。
ノエルは両手をひろげ、鉄人を求めた。
束縛を断ちきってきたのだ。自らの意志で鉄人をその腕に抱くために。
翼だ、と思ったのは錯覚だろうか。なんぴとたりとも傷つけることのできない、汚されることのない純白のノエル。
The first Noel the angel did say
was to certain poor shepherds in fields as they lay
in fields where they lay a-keeping their sheep on a cold winter’s night that was so deep.
天使のつげたはじめの聖夜は
野に眠っていた貧しい羊飼いのもとにもたらされました。
とてもとても寒い冬の夜、
羊たちをつれていたときでした。
鉄人も手をのばした。
まず右手と左手が触れあい、そして両腕が、瞳と瞳が、声と声が、互いの意識が、過去が、未来がからみあった。
ラ・ムエルト。
ラ・ダムネイション。
ふたりの熾天使は、星々の見守る天幕の彼方に翼をひろげ、高く、高く、飛翔した。
2006-02-21
