Press "Enter" to skip to content

イスラ・イナビターダ無人島エンディング8(分岐S)

 ノエルはほっとため息をついた。
「鉄人がそういうのを、まってた」
 鉄人の目尻がきゅんとつりあがった。
「まってただぁ?」
「銀町先生は、鉄人の判断で決めろっていったじゃない」
「そうだけど」
 釈然としない様子である。
「ぼくにできること、いまひらめいた。こんなに簡単なクイズ、どうしてわからなかったんだろ」
 ノエルは鉄人をじっと見て言った。「鉄人を信頼すること」
「なんだよ、それ」
「鉄人がどういう結論を選んでも、ぼくはそれを尊重しろって、銀町先生はいいたかったんだ」
 鉄人はぼりぼりと頭を掻いた。
「そうかなあ」
「そうだよ」
「でも、ノエル、おまえ……この島で」
 急に歯切れが悪くなり、鉄人はひとつ咳払いをした。
「……この島で、終わらせるつもりじゃなかったのか」
「さっきまではね」
「さっきまではって」
「もう無効」
 ノエルの決意は固く、それでいて凪いだ海のように穏やかだった。
「島でできることは、もうなにもない」
 ちょっぴり笑ってつけ足す。「でも、無駄じゃなかったよ」
 鉄人はなにか言いかけたが、うつむいて、また顔をあげた。
「気を抜くのはまだ早いぞ、ノエル」
 引き締まった表情。
「先生のことだ。こんな大がかりなトリックを準備するくらいだから、ほかになんか企んでなきゃおかしい。ヘンだと思ってたんだよ。おれたちのこと、もっと徹底的に隔離してもいいはずだしな。バレる危険性が高くて、ピンチになっても手出しできない無人島なんかじゃなくてさ。なんか、いやな予感がすんな。おまえ、どう思う」
 目にいつもの光が宿っている。
 すなわち、麻雀牌に向きあうときの鉄人だ。
 手の内にある牌と、他人の小出しにする情報を照らしあわせて先行きを推理し、策を練る。
 ノエルも緊張した面持ちで言った。
「帰るべきだね。苦戦してるかもしれないよ」
「だろうな」
 鉄人はひとつうなずいて、踵を返した。
「どうせ父島あたりにヘリを待機させてるんだろうが。その気になったらいつでもどうぞ、って具合によ。よし、思い立ったら即実行。いくぞ」
「オッケイ」
 ヤギにすら負けるくせにひとたび思いこんだら鉄砲玉である。樹花のいる広場めがけて、鉄人とノエルはころげるように猛ダッシュしていった。


2006-07-05