「あした、帰ろう」
ノエルもうなずいた。
「なんでそうまた、いきなり話がぶっ飛ぶんだよ、おめえはよ」
遙兵は仰天して、理解不能な超人類二名を交互に見た。
「三学期のあいだずっといるんじゃなかったの」と霧流。
鉄人はケラケラ笑った。
「孤隼先生や、山岡さんたちのこと? あいつらなら最初っからグル。脅しといて、おれたちが本性むき出しにすんのを狙ってやがったんだ。愉快だったろうな、くそっ」
「ってことは、パパもか。でもなんのために」
「決まってるじゃないか」と鉄人は両の手のひらを天に向けて肩をすくめた。「銀町先生の教育方針ってやつだろ」
「なんだ、それ」
遙兵の頭ががくりとうなだれる。
「気を抜くのはまだ早い」
鉄人の表情が引き締まった。
「先生のことだ。そういういきさつだったら、ほかになんか企んでなきゃおかしい。ヘンだと思ってたんだよ。おれたちのこと、もっと徹底的に隔離してもいいはずだしな。バレる危険性が高くて、ピンチになっても手出しできない無人島なんかじゃなくてさ。なんか、いやな予感がすんな。ノエル、おまえはどう思う」
目にいつもの光が宿っている。
すなわち、麻雀牌に向きあうときの鉄人だ。
手の内にある牌と、他人の小出しにする情報を照らしあわせて先行きを推理し、策を練る。
ノエルも緊張した面持ちで言った。
「帰るべきだね。苦戦してるかもしれないよ」
「だろうな」
鉄人はひとつうなずいて、踵を返した。
「どうせ父島あたりにヘリを待機させてるんだろうが。その気になったらいつでもどうぞ、ってカンジによ。よし、思い立ったら即実行。いくぞ」
「あーっ、待って、待ってーっ、ゆみのまくーん」
ヤギにすら負けるくせにひとたび思いこんだら鉄砲玉である。樹花のいる広場めがけて、鉄人はころげるように猛ダッシュしていった。
2006-07-05
