老人の身体がこわばった。孫を守るように数歩後ずさる。
予期せぬ来訪者にルーファスは愕然とした。クレオは隠し持った飛び道具に手をかけ、ビクトールは両手剣を構えた。
物珍しいものを見るように室内を見回した女性は、足を踏み入れるなり老人ににっこりと微笑んだ。
「おひさしぶりね、おばかさん」
老人は苦しげに唸った。「何の用だ……ウィンディ」
「あら、つれないのね。まあ、昔からあなたはそういう人だったけれど。せっかく訪ねてさしあげたのに、そんな怖い目をなさらないで」
「わたしは、おまえに用などない」
ビクトールが刃で威嚇するのを、女性─────魔術師ウィンディは怪訝な目つきで睨んだ。
「ステキな接待だこと。フフ、しかたがないわねえ」
ウィンディは開け放たれた扉の外へ向かって言った。「いいわ。入ってらっしゃいな」
ビクトールの目が衝撃に彩られた。吐き出された声は言葉になっていなかった。
「きさま……ネクロード………」
ルーファスは現れた男の異様な相貌にギクリとした。ひと目で尋常ではないとわかる青白い肌に、薄い色彩の眼光。そしてなによりも禍々しいのは、剥き出されたふたつの牙であった。それは肉食獣を思わせた。
漆黒の外套がはらりと揺れ、内側が見えた。禍々しい血の色。
ネクロードと呼ばれた異形の男は、ビクトールをギロリと見た。
「おや、知り合いかい? ネクロード」
「……我が輩に人間の知り合いなど、居らぬわ」
ビクトールはカッとして叫んだ。「やかましい! ここで遭ったが百年目だ。積年の恨みを思い知れ、こんちくしょうめ!」
剣を大上段に構える。ネクロードは汚いものを見る眼でビクトールをじろじろ眺め、微動だにしなかった。ウィンディがからかうように言った。
「ふふ、なんだかよくわからないけれど、そちらの方々はおまえにおまかせするわ。しばらくこういう機会もなかったから、血を欲しているのでしょう? 思う存分、お吸いなさいな」
「御意」
「うぉおおおおおっ!」
両手剣が煌めいた。戦車のように突っ込んでいくビクトールに怯みもせず、それどころか表情すらまったく変えないで、ネクロードは手先をわずかばかり閃かした。
突如、空間に稲妻が奔り、矢となってビクトールを襲った。剣を伝わって持ち主に流れ込んだ電流は心臓を止めるほど強くはなかったが、それでも獲物をひれ伏させるにはじゅうぶんだった。
「ビクトール!」
「クマのおじちゃん!」
ルーファスとテッドが同時に叫んだ。蛋白質の焦げるいやな匂いが鼻をついた。
「魔法使い、か。クソ……」
悔しげに言うクレオに今度はネクロードの興味は向けられた。鬱血した目尻をいやらしく歪ませて、おぞましい睦言を吐く。
「気の強そうなお嬢さんが、いらっしゃるようですな。我が輩の花嫁になるには少し、遅かったと思われますが……だが、わたしは貴女のような反抗的な目を見ると、狂おしく焦れずにはいられないのです。さあ、いらっしゃい。その身を引き裂いてさしあげましょう。貴女の血も肉も、わたしのものとなりなさい……」
「行き遅れで悪かったね! なによコイツ、あー気色悪い!」
「……三百年前から変わってねーんだな……この色ボケ吸血鬼………」
クレオの憤激とビクトールの呆れ声が唱和する。
一方、ウィンディと老人のにらみ合いも膠着していた。
「相変わらず往生際が悪いのねえ。諦めてソウルイーターを渡したらよいものを」
「だから何度も言っておるじゃろう! そんなものは、知らん!」
「隠しても、無駄なのに。だからあなたはおばかさんなのよ」
老人の背中に張りついてぶるぶる震えていたテッドが、突然飛び出した。目に涙と怒りをいっぱいにためて、ウィンディに叫んだ。
「出て行け! 魔女め!」
ウィンディの目がスッと細められた。テッドはその足元に躍り出ると、小さな身体にあらん限りの力を込めて、ウィンディを戸口に押し戻した。
「出てけ! 出てけったらぁ!」
ウィンディは手でテッドの肩を掴んだ。その瞬間、鎖に絡めとられたようにテッドの動きが止った。
「あっ……」
手足から力が抜ける。ぐらりと傾いだ身体をウィンディは軽々と支えた。
「あなたの、お孫さんかしら? ふふふ、かわいいわね」
「……やめろ! その子に、手を、出すな」
「あなたにそっくりなお目々をしているのね。おばかさんな、目」
ウィンディはクスクスと笑ってテッドの喉元に爪をあてがった。わずかに動かすと、微かな赤い筋が一本浮かびあがる。
「やめろ……やめてくれ……」
「ソウルイーターを渡してくださるかしら」
「………」
ルーファスはテッドから老人へ視線を移して息を呑んだ。老人の唇が、祈りを紡ぐために静かにひらかれた。
「呪いの紋章、ソウルイーターよ……我はその大いなる力をいまこそ求む……卑劣なる敵と戦うことのできる力を、我に与えたまえ。汝の御心を示したまえ。我の敵を打ち倒したまえ」
ルーファスの右手が急激に、耐え難いほどの熱を帯びた。老人の右手は赤黒く輝き、邪悪な意志を持った渦があたりを席巻しはじめた。ルーファスは一瞬、自分が無意識に右手の紋章を発動させたのではないかと思った。
次にルーファスの身体が動いたのは、テッドがゆっくりと倒れたからだった。ウィンディの手を離れ、静かに静かに、倒れていく。それを受けとめたのが、ルーファスの手だった。
渦からテッドを守るようにルーファスは必死に覆い被さった。ごうごうと耳鳴りがし、どこか遠くで怒号が聞こえた。その音すらも徐々に遠ざかって、やがて世界は無音となった。
「……テッド?」
「おにい、ちゃん……」
「こわくないかい?」
「ウン、だいじょうぶ」
テッドは弱々しく言った。ぎゅっとルーファスの腕を掴む。
切なさと愛おしさが、ルーファスの胸にこみ上げてきた。こんなにも保護を必要としているテッドが、痛ましくてしかたがなかった。
現実がじわりと戻ってきた。クレオはルーファスの傍に駆け寄り、怪我のないことを確認すると安堵の息をついた。老人は手をだらりと垂らしたまま、悄然と立ち尽くしていた。
「チッ、あいつら、逃げやがった。いいのか? 村を焼くだなんて物騒なことをぬかしてやがったぞ。あー、なんだか、頭がガンガンしやがる。おいじいさん、いまのはなんだ」
こめかみを揉みさすりながら、ビクトールは老人に言い寄った。それには返答せず、老人はルーファスに言った。
「ウィンディは必ずまた来る。お若いの、頼みがある」
ルーファスは静かに老人を向いた。
「どうかわたしの決断を、咎めないで欲しい。おぬしを巻き込んで、すまないと思っている。だが運命は、止められない。許してくれ」
「……」
ルーファスは、悲しげに目を伏せた。
「テッド、こっちへ来なさい」
「はい、おじいちゃん」
テッドがルーファスの手をするりと抜けた。なにが始まるのかをルーファスは知っていた。その小さな身体を掴んで逃げ出すこともできた。だが、そうしなかった。
運命の歯車は廻り続ける。
どうしようもない現実と恐ろしい未来を紡ぐために廻り続ける。
「右手を出しなさい」
テッドは無言で祖父に右手を預けた。自分を苛み、解放すらも許してくれない呪いを受け取るため。このテッドは何も知らない。これが運命なら、知らないほうがよい。やがて少年はいやでも気づくであろう。祖父が託した想いと、自らに科された運命に。
「汝、ソウルイーター、生と死を司る紋章よ。我より出で、この者にその力を与えよ」
かつてテッドの口から紡がれたその祈りと一言一句違わなかった。
そして、あのときと同じように光が満ちた。
ほんの一瞬の出来事であった。
けれどルーファスにはとて長い時間に感じた。
小さなテッドが不思議そうに右手を見る。
「おじいちゃん、これ……なに」
不安をいっぱいにあふれさせて、テッドは訊いた。ひょっとしたら、子供ながらに気づいたのかもしれない。悲しそうに老人を見る。
「テッド、許してくれ……」
「おじいちゃん、泣かないで、泣かないでよ」
「こんないい子に……神はなんと残酷なのだ……テッド、わたしは……」
「おじいちゃん」
「おまえを、永遠に、愛しているぞ……」
老人は最後にテッドをぎゅっと抱きしめると、振り切るかのようにルーファスに押し戻した。
「お若いの、どうかこの子を連れて逃げてください。この裏手に、墓地へ抜ける秘密の抜け道があるのです。どうぞ……」
言葉が詰まった。
「ソウルイーターを、あの女から守って……ください……」
なんという。
運命というものは、巡り廻るのか。
テッドがルーファスを逃がすために囮になったように、老人もまた、テッドを逃がすために囮になるつもりなのだ。
戻る道も、避ける道もない。ただひとつの一本道。
「わかりました」
ルーファスは肯いた。いまさら目を背けるつもりはなかった。
「いこう、テッド」
「でも、おじいちゃんが」
「おじいちゃんの気持ちが、わからないのかい」
テッドは口をへの字に曲げてくしゃくしゃとなった。もういちど祖父を見ると、老人はやさしく目を細めた。
「わかったよ。おじいちゃんは、あとから来るんだよね?」
クレオは涙を噛みしめながら、言った。「そうだよ、テッドくん。さあ、急がなきゃ、ね」
「おじいちゃん」とテッドはもう一度だけ振り向いた。「ぼくも、おじいちゃんがだいすき。ずっとだよ」
「おい、早くしろ!」
先に立ったビクトールが促した。外がまた騒がしい。バリバリという音も聞こえてくる。ウィンディが村に火を放ったのであろう。
床板をはぐるとその下にぽっかりと地下間道が現れた。体格のよいビクトールは腰を屈めて駆け抜けなくてはならなかったが、道はさほど長くなかった。どん詰まりに上へあがる梯子が置かれ、小さな出入り口は麦の穂で隠されていた。
ルーファスは熱を帯びた外気に驚いた。村が真っ赤に燃えていた。悲鳴が飛び交い、断末魔の呻きが聞こえてくる。
「逃げよう」
クレオの言葉は、遮られた。炎に気を取られて気づかなかったが、墓の列にひとつの人影があった。それは闇にとけこんで、鬱然と嗤った。
「痺れを切らしましたよ」
その口調に込められた悪意に一同はゾクリとした。新手の敵か。ネクロードもそうであったが、今度の敵も黒ずくめの格好をしていた。目が慣れてくると、男は鎧姿で、手に剣を持っているのがわかった。
男は一同を順に見た。ルーファスに留まり、テッドに留まる。だが、その視線はとどまらずに流れていった。
「……ウィンディさまもつまらぬ仕事を押しつける。斬り刻んでよいと言われても、ウジ虫では心も満たされぬわ。フン。まあどうでもよい」
男は残酷に言い放った。「我がクリムゾンの餌食になれ」
「危ねえ!」
ビクトールを合図に一同は散り散りに跳ねた。スッパリと分断された麦の穂先がばらばらと降ってくる。ルーファスはテッドの手を引いてできるだけ村とは逆の方向に走った。クレオやビクトールのことは、無事に逃げてくれるように祈るしかない。
「わっ!」
テッドが墓石のひとつにつまづいて転び、その勢いでルーファスとつないだ手を離した。丈の高いチモシーと野生化した麦の入り交じった斜面に転げ落ちる。咄嗟に手をさしのべたが、掴むことはできなかった。
「テッド!」
ルーファスは総毛立った。黒ずくめの男が転げ落ちてきた獲物を舌なめずりして待ちかまえていた。
「逃げろー!」
ルーファスの絶叫にテッドは弾かれるように立ちあがった。だが足がもつれ、三歩も行かないうちに草むらに突っ伏した。
追いつめられた兎と一緒である。幼いテッドは黒ずくめの男に完全に射すくめられた。男の邪眼が残酷に光る。
「まずは一匹」
恐怖に凍りついた身体に、死出の刃が振り下ろされようとした。その時。
「いやだ───────ッ!」
何かが、光った。
ルーファスの網膜に赤黒い渦が焼きついた。心臓が痛いほど跳ねた。
光は村を焼く炎を覆い尽くすほど強烈に輝き、ルーファスを地に這わせた。
テッドの紋章が発動した、とルーファスは意識の底で思った。
継承したばかりのソウルイーターが、制御しきれぬままに暴走したのだ。
ルーファスの右手もジクジクと脈打った。本来ならひとつであるはずの、それ。呼応するように、荒く息をついていた。
光が急速に収縮した。
「……くっ」
テッドの傍らにいた男は暴走に巻き込まれたはずなのに、驚くべきことにわずかによろめいただけでまだ地に立っていた。訝しげな顔をテッドに向け、低く呟く。
「……小僧……きさま、まさか」
丘の向こうからもうひとつの影が走ってきた。ルーファスはその正体を見抜いて呻いた。ネクロードである。焦ってテッドを見ると、こちらは茫然自失と座りこんでいた。
「おい、ユーバー。なにを遊んでいる? いまのはなんだ」
ユーバーと呼ばれた黒ずくめの男は少し間をおき、「たいしたことではない」と言った。
ネクロードはちらりとテッドを見て、続けた。 「ウィンディさまがお呼びだぞ。じじいめ、逃げやがった。お主も、捜せ」 ユーバーはぼそりと言った。「こっちのほうが、楽しそうなのだがな……」
「そんなガキは、捨てておけ。自慢の剣が錆びついても知らぬぞ」
「フフフ」
ユーバーは妖しげに嗤うと、背を向けた。眼もあわさずに、テッドに言い残す。
「次は、おまえだ」
立ち去っていくふたつの影を虚ろな目で見送りながら、小さなテッドはがたがたと震えた。ルーファスは自分も転がり落ちながらテッドのもとへ駆け寄った。
「テッド!」
「……お、にい、ちゃ……」
ひきつけを起こしたように痙攣して、テッドは喘いだ。ルーファスはその身体を必死に抱きしめた。手も頬も色を失って冷たい。
「テッド、テッド……」
「おにいちゃん……うっ、うっ、う………」
どんなにか怖かったろう。こんなに幼いのに、暴力的な死をかいま見たのだ。それはどれほどの恐怖だっただろう。
堰を切ったようにテッドは大声で泣きはじめた。指先に熱が戻ってくる。そのまま長い長い時間、ルーファスの胸の中で泣いた。
ビクトールとクレオが駆けてきた。
「おい、だいじょうぶか」
「大丈夫」とルーファスは答えた。クレオが丘の先を指し示す。
「急ぎましょう。あの祠が輝いているんです。ほら、わたしたちがこちらへ来たときに、最初にあった祠です。もしかしたら、もとの世界に戻れるかもしれません」
「……帰っちゃうの?」
少し落ち着いたらしいテッドが不安げに訊いた。クレオは膝を折ってテッドに接する。
「テッドくん、わたしたちはいつまでもこちらの世界にいるわけにはいかないの。わたしたちにも、やらなくちゃいけないことが待っているのよ。あなたもそう。あなたはこれからこちらの世界で、ひとりで生きてゆかなくてはならないの。……わかる?」
テッドは気づかれないほどに小さく肯いた。
小さなテッド。
クレオは万感の想いで少年を見た。
この先、たったひとりで三百年もの長い時間を旅するのだ。こんなに儚げでいまにも壊れそうなのに、神様は道を曲げることをお許しにはならないのだ。
その果てに待つ運命がけしてやさしいものではないということも、クレオは知っていた。旅の終わりに少年が選択した残酷な結末も、身を切られるような後悔の叫びも、クレオは憶えていた。
神様。
運命とは、ほんとうに変えられないものなのですか。
そうだとしたら、あなたはなんという過酷な試練を我々にお与えになったのでしょう。
「祠が、輝いてる……」
ルーファスはぼんやりとその光景を見た。来たときと同じように、この光に身をゆだねれば、戻れる。
あちらの世界ではテッドが待っているのだ。
「その子、ホントに連れていかないのか」
ビクトールが困惑気味にちらっとルーファスに目をやった。ルーファスはテッドの手を握ったまま、「ああ」と言った。
「連れては……いけない」
テッドはまたぼろぼろと泣き出した。必死にしゃくりあげながら、懇願する。
「行っちゃうの? 行っちゃうんだ。ぼく、どうすればいいの。みんな死んじゃった。ぼく、わかるんだ。感じたんだ。おじいちゃんも死んじゃった。ぼく……」
「テッド……」
テッドは涙と鼻水に濡れた顔をルーファスに向けた。
「ねえ、いっしょうのおねがいだよ。ぼくもつれていってよ」
”一生のお願い”
小さなテッドの姿が涙でかすんだ。
ルーファスの背にそっと手をかけ、クレオは学校の先生がそうするように、テッドの頭をなでた。わざと元気を出して、凛とした声を張りあげる。微妙に涙声にはちがいなかったが。
「テッドくん。強い子になりなさい。これからいろいろなことがあるけれど、決して負けないこと。お姉さんと約束しましょう。テッドくんはほんとうは、すごくすごく強いのよ。自信を持って。また会いましょう」
「ホント? うん、約束する」
「それから、その紋章のことは誰にも言っちゃだめよ」
「わかった。約束」
「指切りげんまん」
クレオはテッドの小さい小指に絡めた。
「ゆびきり、げんまん」
ビクトールが笑う。「いい先生だぜ。ほらよ、クマのユビキリゲンマンは太っといぞ」
「クマのおじさん、元気でね」
「おおよ。今度会ったらな、俺の子分にしてやるぜ」
「子分になってやるぜの間違いじゃないのかい?」
クレオの冗談にテッドはケラケラと笑った。その表情がまた悲しみに萎む。
「ぼく……やっぱり、ぼく……」
心細いのだろう。当然すぎて余りある。
テッドはルーファスにすがるような目つきを向けた。
「おにいちゃん……いかないで……おねがい……」
祠の放つ輝きが少し薄らいだかに見えた。
「おい……そろそろ時間切れみたいだぜ。ルーファス」とビクトール。
ルーファスは。
テッドの瞳に映る顔を無理矢理笑顔にした。
「ごめん」
失望の色を浮かべ、テッドはまたぼろぼろと涙を落とした。
「テッド」
「おにいちゃん」
「テッド。ぼくは、テッドのことをずっと待っているよ。ぼく、必ず生まれてくるから。テッドに会うために生まれてくるから。だからテッドも約束して。生きるって約束して。ぼくは、テッドが、がんばるって……きっとがんばるって、信じてるよ。テッドもぼくを信じて。ぼくのことをさがして。テッド、きっとわかるはずだよ。ぼくもテッドに気づくはずだよ。そしてテッド、ぼくたちきっと、親友になろう」
「シンユウ?」
「友だちだ」
「友だち……」
「そうさ。ぼく、これからあっちの世界にテッドを迎えにいくんだ」
ビクトールが叫んだ。「ルーファス、早くしろ!」
ルーファスはもう一度だけ繰り返した。
「ぼくは、テッドのことをずっとずっと待っているよ」
目映い光がルーファスを包んだ。小さなテッドが光のむこうでこくんと頷き、目にいっぱい涙をためて笑うのが見えた。
次回から最終章突入です。やれやれこの人たちは。
2005-11-14
